◻︎ KU-ELの目指すところ(「完全な暗記」と「深い理解」)

心構え

「暗記」と「理解」は数学の問題を解く手段の両輪である。 そして、どちらか一方でも十分に鍛えられていないと、問題を解く能力は向上しない。

たとえば、公式を覚えているだけでは京大レベルの問題はなかなか解けない。 どの公式を、どこに、どのように適用してよいかがわからないからである。 しかし、過去に似たような問題を解いたことがあれば、 多少難しい問題でも、過去の問題の解法を参考に解けることが多い。 これは、誰でもが経験するうれしい瞬間である。つまり、問題の解法を 覚えるということは問題を解く上で非常に助けになる。 人によっては、数学は「ひらめき」が重要で、問題の解法を 暗記することは邪道のように感じるかもしれない。 しかし「ひらめき」とは、そもそも今、自分の取り組んでいる問題が、 過去に自分の解いた問題と (無自覚に) うまく結びついた現象にすぎない。 この結びつきは、もちろん過去の問題を覚えていないと起こらない。 したがって、問題の解法を覚えることは数学の王道と言える。

一方、問題とその解法の道筋を単純に覚えているだけでもだめである。 似たような問題でも、少しひねられるとわからなくなることは多い。 それは、解法の理解の深さが足りないからである。 どのような発想、どのような検討 (調査) でその解法が導かれたかまでの 理解がなければ、せっかく覚えた解法の応用範囲がせまいままである。 その理解が深いほど、一見大きくかけ離れた問題の中にも類似した 状況が見出され、解法の糸口が得られるのである。そしてこの類似が 深い (より抽象的な) ところで起こると、大きな「ひらめき」が 起こったと感じられるだろう。理解が深いほど、 覚えた解法の応用範囲は広がっていくのである。

最後に重要なことは、「暗記」と「理解」は独立にあるのではなく、 互いに密接に依存しているということである。 問題と解法を暗記していれば、いつ、どこででもそれを 考え直すことができる。そして、何度も考えることで、 いろいろなことに気づき、理解がどんどん深まる。 一方、理解が深まれば、その問題および解法の本質的な 部分が見えて、覚えることが少なくなる。またその意味も明らかになって より記憶しやすくなる。

まずは、以上のことを理解して、効率的な勉強に取り組んでほしい。

具体的な目標

KU-ELを使って目指す暗記のレベルは、ここに収録されている (過去) 問題を全て覚えることである。うろ覚えでなく、全ての問題を 頭の中で繰れるように完全に覚えるのである。KU-ELでは、 問題は、章 (「I. 数と式」など)、節 (「a. 数] など)、 テーマ (「(1) 因数分解振り分け [基本1]など」)により、 階層的に分類されている。この階層を利用し、 全ての問題を覚えることはそれほど難しくない。 まずは、章を覚え、次に各章にぶら下がる節を覚えるのである。 このように階層構造で覚えると、問題の想起もしやすくなり、 繰り返しの想起で、記憶が効率良く定着していく。 そして、スマホアプリの特性を生かして、空いた時間に何度も繰り返し覚えるとよい。 また、今後、このクラブでは、各章、各節、各テーマが覚えやすいように 肉づけの付加情報を随時提案していく。

問題が覚えられたら、次にその問題の解法の道筋を覚える。 もちろん、解法の一字一句を覚える必要はない。 どのような流れで問題が解けるか、その流れを記憶にとどめる。 同時に、どのような検討がなされ、どのような発想が必要だったかも 覚えるとよい。これらはその解法についての、抽象度の高い付加情報である。

以上のことができたら、全体の問題の構成 (階層構造) を意識しながら、 各問題を想起し、その解法の流れを想起して考えてみる。解法を考えるときは、 解法に付随する「この問題で学ぶこと」を意識すると、解法のポイントが 明確になる。何度も繰り返していると、解法はだんだんと頭になじんでくる。 解法のある部分に疑問を感じ、それを解決すると解法はますます身近になり、 応用力を増していく。最初はとっつきにくくても、あきらめずに繰り返すことが 重要である。そして、この繰り返しを少しでも容易にするために暗記するのである (暗記していれば、いつでもどこでも簡単に繰り返される)。

最後に注意として、「暗記」、「理解」の繰り返しは、最初は 効果が小さくとも、あるときから急に大きな効果が現れるのが常である。 したがって、繰り返しを途中であきらめないことが重要である。その一方、 反復練習では、間に適度な休憩を入れることも大切である。 頭が飽きてくると、記憶の定着は極度に弱まるようである。 どれぐらいの休憩が適切なのかは、人によって、また同じ人でも 状況によって異なるのでなんとも言えないが、自分で 休憩を意識して、自分に合った、またその状況に合った 休憩時間、休憩方法を探ってほしい。

もう一つ蛇足の注意として、ここでは「過去問以外は 勉強する必要がない」と言ってるわけではない。 ただ、一通りの基礎的な数学の勉強を終えた後、 他大学の難問を解くよりも、受験する大学の過去問を 徹底的に勉強するほうが受験勉強としての効率は はるかに高い。徹底的に過去問を勉強した上で、 まだ余裕があったら、他の問題に取り組んでみるのもよい。 そうすれば、過去問の見地から (過去問との結びつきの中で)、 有益な情報が効率良く吸収できると思われる。


◻︎ 階層構造 (章、節、テーマ) を覚える

章を覚える

まずは章立てを覚える。4つしかないので簡単ではあるが、 最初の出発点になるのでしっかりイメージを持ってほしい。 以下に、少し肉づけをしてみる。あくまで参考のつもりで見てほしい。

最初の2つ、「I. 数と式」「II. 図形」は、ピタゴラスや アリストテレスの古代ギリシャの時代からある 「代数」と「幾何学」のことである。いわば、数学の基礎部分である。 商売や測量に大きな力を発揮してきた。 現代においては、「代数」と「幾何」が一体化している分野もある。
 歴史は下って、ニュートンの時代に (章立ての順番は前後するが) 「IV. 微分・積分」の「解析」が花開いた。 そしてそれ以後、物理や工学の分野で無数の応用を得ている。 その特徴は、不等式を巧みに利用して極限を操る点にある。 極限を考えることで、有限世界の煩雑さが解消される事実が 成功の原因のようだ (等比無限級数の公式は簡単な形である)。
 そして、近代になって 「III. 初等関数・数列・確率」の「確率」が 登場する。他の分野と比べて比較的歴史が浅いので受験数学の 中でもやや扱いが少ない。それで、ボリュームの均等性を考慮し、 「初等関数」と「数列」も同じグループに加えている。 ただし、確率の重要性は近年増すばかりで、 工学、金融、セキュリティなどの分野で重要な役割を演じつつある。 例外を無視できるところに強みがあるようである。

節を覚える

「I. 数と式」にぶら下がる節は簡単である。章のタイトルを2つに分けた「a. 数」と「b. 式」である。 「II. 図形」にぶら下がる節は、中学で学ぶ「a. 初等幾何学」と、高校で習うベクトルが効果を発揮する 「b. 平面図形」と、「c. 空間図形」である。「III. 初等関数・数列・確率」にぶら下がる節も簡単である。 章のタイトルを3つに分けたものである。ただし「初等関数」は、もう少し具体的に、 「a. 三角・指数・対数関数」となる。後はそのまま、「b. 数列」、「c. 確率」となる。 最後に「IV. 微分・積分」にぶら下がる節である。 まずは文系とも共通な「数2の微分・積分」である。その後に、「b. 極限と微分」と「c. 積分」が続く。 「極限」は「積分」にも関係するが、やはり微分との関係が深い。最後に、「d. 体積」である。 「c. 積分」と一緒にしたいところだが、含まれる分量が多いので、独立した節を与えた。 特に「回転体」の体積の問題が多い。

ぶら下がる節の数は順に、2個、3個、3個、4個となることも、それぞれの節を思い出す ヒントとして覚えておこう。

テーマを覚える


◻︎ 各問題の説明 (構築中)

I. 数と式
a. 数
(1) 因数分解振り分け [基本1] <3問>
(2) mod [基本2] と素数  <2問>    解法pdf 1個
(3) 変数の範囲をしぼる [基本3] <2問>    解法pdf 1個
(4) 素数ベキの処理 [基本α]  <2問>
(5) 無理数  <4問>    解法pdf 1個
(6) 組合せ  <2問>    解法pdf 1個
(7) 数学的帰納法  <4問>    解法pdf 1個
(8) 図形  <2問>

b. 式
(1) 割り算  <5問>    解法pdf 1個
(2) 共通解, 重解   <4問>    解法pdf 1個
(3) 虚数解  <2問>    解法pdf 1個
(4) 交点   <2問>
(5) 不等式  <3問>    解法pdf 1個
(6) 対称式  <1問>
(7) 複素数  <1問>

II. 図形
a. 初等幾何学
(1) 三角比  <4問>    解法pdf 1個
(2) 円周角  <5問>    解法pdf 1個
(3) 座標  <2問>    解法pdf 1個
(4) 相似  <2問>

b. 平面図形
(1) 交点, 表現  <3問>    解法pdf 1個
(2) 内積と角  <4問>    解法pdf 1個
(3) 座標 <1問>

c. 空間図形
(1) 平面, 直線 <5問>    解法pdf 2個
(2) 球面と距離  <4問>    解法pdf 1個
(3) 正四面体  <6問>    解法pdf 1個
(4) ベクトル, 垂直, 内積<5問>    解法pdf 1個

III. 初等関数・数列・確率
a. 三角関数
(1) 三角関数の公式  <4問>    解法pdf 1個
(2) 3角関数の微積分  <4問>    解法pdf 1個
(3) 指数・対数  <2問>

b. 数列
(1) 数列  <6問>    解法pdf 1個

c. 確率
(1) 根元事象  <6問>    解法pdf 2個
(2) 独立試行の繰返し  <6問>    解法pdf 1個
(3) 依存した試行  <5問>    解法pdf 1個
(4) 漸化式の利用  <9問>    解法pdf 2個

IV 微分・積分
a. 数2の微積分
(1) 囲む面積  <5問>    解法pdf 1個
(2) 接点, 交点  <4問>    解法pdf 1個
(3) その他  <2問>    解法pdf 1個

b. 極限と微分
(1) 極限  <4問>    解法pdf 2個
(2) 最大・最小  <5問>    解法pdf 1個
(3) 接線  <2問>

c. 積分
(1) 置換積分  <3問>    解法pdf 1個
(2) 部分積分  <3問>    解法pdf 1個
(3) 面積  <4問>    解法pdf 1個
(4) 長さ  <3問>    解法pdf 1個
(5) 不等式  <3問>
(6) 級数と積分, 積分と微分 <2問>

d. 体積
(1) 回転体  <8問>    解法pdf 2個
(2) 変化する断面  <2問>    解法pdf 1個