独立試行の繰り返しの問題では、可能なアプローチが3つある。 1つ目は、1回1回の条件を満たす試行結果の確率を求め、 それを掛け合わせて条件を満たす試行列の確率を求め、そしてそれらを足し合わせるもの。 2つ目は、試行の列の長さが決まっている場合に、1つの試行の列を 1つの場合と見て、条件を満たす場合の数を求めるアプローチ。 最後に、試行の列の長さ n について、求める確率 pn の 漸化式を定めて解くアプローチである。
 問題によって、使えるアプローチ、適したアプローチが違ってくる。

問1

1〜9の番号を同時に2枚選ぶ試行を2回行い、両方の小さい方が一致する確率の問題。

一致する番号kで場合分けする。まず、2枚選んで小さい方がkになる確率pkを計算する。 2回の試行は独立なので、Σ pk・pk となる。


問2

1〜nの番号を順に積んだ山 (1が上)で、一番上を任意の場所に挿入する作業を続ける問題。

まずは試行が、どのように進んでいくかを把握しないといけない。 一番上のカードをある場所に入れると、その場所より下のカードは そのままで、その場所より上のカードは一つ上に上がる。

今、求められる状況が実現されるのは、n回のなかで一回だけ(k回目) n番のカードが 上に上がらず、それいがいは上に上がる状況である。このk回目の値で場合分けをして、 条件を満たす試行の列の確率を求め、それを k に関して和 (Σ) をとればよい。

2004年問6と同系統の問題である。


問3

4面体の頂点を1秒ごとに隣の頂点に移動する動点が、n秒までに全ての点を通る確率の問題。

「n秒までに全て」の扱い方に2つある。一つは、初めて2つ通った時間、 初めて3つ通った時間、そして初めて4つ、すなわち全部を通った時間で 場合をする方法である。もう一つは、背反を考える、すなわち「n秒までに全て」 を通らなかった場合を考え、それを全ての場合から差し引く方法である。

解法1では、前者の扱いをとる。アプローチとしては、条件を満たす各試行の確率を掛けて足す方法である。考え方はわかりやすいが、議論と計算の手間が少し多い。
 解法2では、後者の扱いをとる。アプローチは、根元事象に基づくものである。 ベン図の内容を間違いなく把握し、使えないといけないが、議論と計算は単純である。
 解法3は、前者の扱いで、漸化式によるアプローチである。本問のように、フェーズが単調に進行していく (2つ訪問 -> 3つ訪問 -> 4つ訪問) では、漸化式の表現が容易である。ただし、間違いなく漸化式が解けないとけない。


問4

1 〜 n を選ぶゲームで 1回目 ≦ 2回目 ≦ 3回目 となる確率の問題。

簡単な問題である。
解法1で、条件を満たす各試行の確率を掛けて足す方法を示した。 x、y、z のどれを軸に場合分けするかで考え方 (和の取り方) が変わる点に 注意する。

解法2で、場合の数を数える方法を示した。ここでは重複順列を利用した。 発想を逆転すると簡単に解けてしまう。 解法に示された発想を理解してほしい。


問5

1〜Nの箱に白玉、N+1の箱に赤玉のとき、k回目でkの箱と他の箱を 入れ替える作業を続ける問題。

まずはこの操作による変化で、何がポイントなのかを見極める必要がある。 そのため、n = 4 ぐらいで、状況を調べてみる。kの箱は k ≦ Nでいつも白玉である。 「他の箱」が赤玉の可能性がある。それが白玉なら何も変化しない。 それが赤玉のとき、赤玉の移動が起こる。この状況で、赤玉がどう移動するか という問題である。

状況が理解できれば簡単な問題である。3つの解法を示したが、基本的にどれも大差ない。


問6

n回のサイコロの目の積が、 3で割れる確率、6で割れる確率の問題。

(1) は簡単である。排反事象を考えると、すぐに解ける。

(2) に対しては、3つの解法を示した。
 解法1では、場合の数を数える方法を示した。 ベン図を適切に利用することがポイントである。これさえ正確に把握できれば 、一番簡単に答えが求まる。
 解法2では、条件を満たす各試行の確率を掛けて足す方法を示した。 2の倍数か、3の倍数が最初にでる場所で場合分けし、さらにそれが "2または4" か、3か、 6かの3つに場合分けして論じている。考え方はわかりやすいが、計算は大変である。
 解法3では、漸化式を利用する方法を示した。解法1に類似した観点で 場合分けをしている。計算量は少ないが、漸化式の導入の仕方に神経を使う。