整数の議論の中で、広範囲に役立つ手段がmodの計算である。 従って、modの計算には十分に慣れておく必要がある。

問1

素数から作られる素数の問題。

一見、どう手をつけてよいかわからない問題である。 このような問題は具体例を調べて状況を把握し、そこから問題解決のヒントを 得るのが唯一のアプローチである (そもそも、具体例を調べて解決のヒントを得る作業こそが、 数学の最も本質的な部分である)。 どのような具体例を考えるかが、腕の見せ所である。 受験の数学では時間が限られているので、一番簡単な 例から調べてみるのがよい。

簡単な例を調べて、「pかqが2でなければいけない」ことがわかる。 もう少し調べると、「p、qのうち2でないほうが3の倍数でないと いけない」のではと予想されるようになる。 その予想を証明するために mod の計算が威力を発揮する。

q ≡ 1 (mod 3) から q = 3k + 1 (kは偶数) として、qの式を与式 2q + q2から消去することでq ≡ 1 (mod 3) の条件を与式に組み込んで議論をしやすくするテクニックがここでも使われている。

○基本事項の確認:mod の計算
a ≡ b (mod c) とは、「aをcで割った余りとbをcで割った余りが同じ」ことを表す。 つまり、各整数の特徴として、cで割ったときの余りだけに着目し、 この特徴で一致する(cで割った余りが同じ)2つの数を同じものと見なすのである。
 例えば、mod 5で考える場合、5で割った余りは0, 1, 2, 3, 4 のどれかなので、 全ての整数をこの5つのグループに分類したものと考えられる。7 と 22 は mod 5 で 同じ (余り2の) グループに属する。
 これだけでは、整数全体を 5 つのグループに分けただけだが、 ここで重要なのは、このグループの間で +、–、× ができることである(÷は一般的にできない)。つまり、a ≡ b (mod 5) c ≡ d (mod 5) ならば a + c ≡ b + d (mod 5)、 a – c ≡ b – d (mod 5)、a × c ≡ b × d (mod 5)が成り立つことである。このmod の計算が、絶大な威力を発揮する。より進んだ数学の世界では、このmodの計算のような考え方が議論を進める最も基本的な手段になっており、出題者もそれを認識して問題を作っているはずである。
 最後に、a ≡ b (mod c) の別の見方として、「a – b がcで割り切れる」というものもある。 この見方も、議論をしやすくする場合があるので心にとどめておくとよい。

○練習問題:124 ≡ x? (mod 5) (0≦ x < 5)
○練習問題:12100 ≡ x? (mod 5) (0≦ x < 5)

随所に素数である条件を使っていることにも注意する。 適切なところで、きちんとこの条件を使っていかないと議論が頓挫する。



問2

素数から作られる素数の問題 (簡易版)

これも一見、どう手をつけてよいかわからない問題である。 簡単な例で調べて、nが3の倍数であることが必要と予想される。 その証明を mod 3 の計算で示している。

見かけはわずかに違うがよく見ると、問1と同じ問題。10年後に ほぼ同じ問題を出すところが京大の大らかなところ。

○練習問題:nが5の倍数でないとき、 n4 + 4 が5で 割切れる ?