問1

整数a、b の整式が整数で割り切れる問題。

「a3+b3 = 81」 という条件でなく、「a3+b3 が 81で割り切れる」-- ①という条件になっているところが少し難しい。 またそれに関連して、「a2+b2の値を求めよ」でなく、 「a2+b2の最小値を求めよ」となっているところにも気をつけないといけない。①の条件からでは、a2+b2の値は定まらないから。

基本的な考え方はやはり、a3+b3を因数分解し、81も素因数分解し、因子の割り振り方で場合分けして議論を進めるしかなさそうである [基本1]。ただし、①のような条件では、「因子の割り振り方で場合分け」に一工夫が必要になる。

簡単な例で考えてみる。x, yが自然数で 「xy = 4 = 22 」だったら、 (x, y) = (1, 22), (2, 2), (22, 1) の場合分けができる。 この場合分けを少し違った見方をすると、 xが丁度 20で割り切れる場合、丁度 21で割り切れる場合、 丁度 22で割り切れる場合という分け方になっている。 このとき、y は xy = 4 から、 順に y = 4, y = 2, y = 1 となっている。 この見方を①の条件にも適用すると、 xが丁度 20で割り切れる場合、丁度 21で割り切れる場合、 丁度 22で割り切れる場合という分け方は同じである。 このとき、y は①の条件から、順に 「yは22 で割り切れる」、 「yは21 で割り切れる」、「yは20 で割り切れる」 (これは, yが1で割り切れるという意味のない条件)となり、正確な場合分けができた。

つまり、「丁度 2xで割れる」という見方は「...で割れる」という微妙な条件で厳密な場合分けをするときに役立つ。そしてこの見方は、もっと進んだ整数論の世界でも重要な役割を果たす。


この問題のもう一つのテーマは「枝刈り」である。場合分けが多いとき、無駄な計算をさけるためになるべく早い段階で、簡単な計算により無駄な (不適な) 場合を見つけることが重要である。解法では、a + b が 3xで割り切れるという条件を a + b = 3xk (k は整数)、よって b = 3xk - a という条件に書き換え、この式を使って、与式a3+b3からbを消去することで、この条件を直接与式に組込んで枝刈りの議論(矛盾を導く議論)をしやすくしている点に注意する。「割り切れる」ことが問題になる議論では有用なテクニックである。

○練習問題:a − b が丁度3で割り切れ、bが3の倍数でないとき、 a2 + ab + 3b2 は 9で割り切れないことを示せ。


最後にもう一つ、この問題の重要なテーマは、a2+b2の最小値を求める議論である。まず、最小値を与える実数値 r を求め、その実数値を挟む整数 n (n≦ r ≦ n + 1) を求めると、n か n+1 が整数を定義域とした与式の最小値を与える。あとは n での与式の値と n+1 での与式の値を比較する。

○練習問題:xが整数のとき、f(x) = (x – 52)2 + 114 の最小値は?
○練習問題:xが0以上の整数のとき、f(x) = 2x3 – 21x2 + 18x + 200 の最小値は?


問2
整数a、b の整式が整数と等しい問題。

これは「簡単すぎる」問題で、短い時間で解いて余った時間を他の問題に 回すべき問題である。

問1と違い、xy = 4 タイプの簡単な場合である。 [基本1] のアプローチにしたがって、左辺を因数分解、右辺を素因数分解して 素因数の振り分けを考える。 ただし、x、y は自然数でなく整数となっているので (x, y) = (1, 22), (2, 2), (22, 1) だけでなく、 (-1, -22), (-2, -2), (-22, -1) の場合も考えないと いけない。これは、忘れがちなので注意する!  場合の数が多いので、早めに枝刈りしたい。

解法では、平方完成して因数の一つの2次式が常に正であることを 示して、場合の数を半分に減らしている。 このように、(多変数の) 2次式が常に正、あるいは常に負になる 場合 ("定符号"という) がある。これはいろいろと使える性質なので "定符号"かどうか少し気にする習慣があるとよい。

③ のところで、[右式の値が小さすぎ...]とある。 このような感覚を持つことが重要である。

多変数の2次式の平方完成の計算には慣れておくこと。 また、1変数の2次式になったら、定符号かどうかは判別式でわかる。

問3
整数a、b の整式が素数と等しい問題。

x、y が自然数で xy = 4 のタイプに、x < y の条件が加われば、場合の数は半分に減る。

2項展開と込みで、pCr (pは素数) が pで割り切れる性質は頻繁に利用される。

○ 基本事項の確認7C3 = 7・6・53・2・1 で素因数の7は残る。

nCk = nCn-kも、思わぬところで役に立つ。「奇数を奇数個足したものは奇数」、「偶数個足したものは偶数」は 当たり前だが、これも重要な役割を果たす場合がときどきある。